進行神経芽腫(neuroblastoma: NB)は集学的治療にもかかわらず、依然として予後が不良である。13-cis retinoic acidを用いた研究では、N-myc遺伝子発現のdown regulationが起こり、分化誘導効果を示すことが知られているが、NBに対する臨床効果は十分とは言えない。そこで我々は今までとは異なる機序でなおかつ、より副作用の少ない効果的な薬物の開発を行った。

予後不良なNBでは、神経成長因子 (nerve growth factor: NGF) 受容体 (trk-A) においてNGF-trkAによる細胞内シグナル伝達系に異常が起きており、この伝達異常が腫瘍の悪性化や予後に深く関与していると考えられている。

NGF-trkAによる細胞内シグナル伝達系はリガンドからの刺激を、受容体ドメインのチロシン残基のリン酸化(シグナル伝達蛋白の活性化)により細胞内に伝える。その刺激はmitogen- activated protein kinase (MAPK) cascadesにより、核内の即時型初期遺伝子(c-fos)に伝達され、細胞の分化・生存維持に関与すると考えられている。

そこで我々は、細胞内シグナル伝達のチロシンのリン酸化を保護し、受容体からのシグナルを持続的に細胞内のMAPK cascadesを介して核内へ伝達させ、c-fos遺伝子の発現の誘導・維持に導いて、腫瘍細胞の分化誘導を促進させる化合物(cyclophane: CPPy)の合成を行った。そしてこの化合物の有用性を、分子生物学的な手法を用いて検索した。その結果、CPPyはTrkA受容体シグナル伝達を修復し、神経芽腫細胞を分化へと導くことを見出した。

CP-M
シグナル伝達
神経芽腫に対する新規治療薬の開発