現在、癌治療に用いられている薬剤には天然の植物に由来するものが少なくありません。我々は、現代の集学的治療を駆使しても生命予後が不良な小児悪性腫瘍である進行神経芽腫に対して、天然物由来の成分から効果的かつ安全な薬剤の探索を行っています。

1. アポトーシス誘導型抗腫瘍薬の探索

 アポトーシスとは生命活動の中で元来備わっているプログラムされた細胞死で、この機構の異常が腫瘍の発生や増殖に大きく関係していることが知られています。我々の研究では、ヒト由来神経芽腫細胞培養株に対してアポトーシスを誘導する化合物を探索し、アシタバやマリーゴールドの成分に強いアポトーシス誘導活性を持つものを見出すことができました。

       

マリーゴールド由来成分によるアポトーシス像 (核の凝集や断片化が見られる)

2. 分化誘導型抗腫瘍薬の探索

 神経芽腫は発生期の腫瘍であり、交感神経などの成熟した細胞になり損ねた細胞が増殖したものです。即ち、腫瘍細胞に分化を誘導することにより成熟した細胞に育てることは腫瘍の治療につながるという訳です。我々はこの観点からも天然物由来成分の探索を行っており、レイシ由来のトリテルペンに分化誘導活性があることを明らかにしました。

       

レイシ由来成分を作用させた神経芽腫細胞(突起の伸長が認められる)

神経芽腫に対する天然物由来成分の効果